reportage (2005)
いくつかの互いにずれた時間軸(1.~4.)を配置して、「今ここ」の空間を構成する。
1. アメリカを移動しながら撮影した8mmフィルムの映像。コマ落としで、ゆっくり進行する。
2. 1.の映像を見ながらその説明をする、作者自身の姿のビデオ映像。
(ギャラリーの室内で撮影したもの。1.の映像とシンクロして流れている。)
3. 1.の映像から抜き出された静止画像のスライド。
約20秒に1枚の速さで映写され、時おり1.の映像に追いつき、追い越していく。
4. 展示場所後方に設置されたビデオカメラが、
1.~3.の映像と、それを見る観客が存在する現在の光景をとらえ、
脇のモニターに映し出している。
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映像と映像のあいだの距離、
映像とそれについて語る言葉との距離、
観客がそこにいる「現在」と映像たちが持つ時間との距離。
それらいくつかの距離を重ね、ずらしていくことによって
「経験する」ことの感触をとり出そうとした作品。
(2005.7 @Ogallery Top’s/東京,2005.9 @STUDIO 2001/愛知)
これは、アメリカで撮った映像なんですけれども。シアトルからポートランドに行く途中の、カナダとの国境の近くですね。…国境からはもうちょっと南下した、バンクーバー、カナダのバンクーバーからシアトルを通ってポートランドまで行く電車の中のどこか。
朝、だったのかな…。行ったのは4月だったんですけれども、この辺は雨が多い地域らしくて、曇りがちで、…この日もずっと曇っていた、気がします。
これは、その電車に乗って、電車を乗り継ぎながら、ロサンゼルスまで海岸沿いに南下して行ったんですが、その電車の中です。もうかなり、カリフォルニア州のロサンゼルスに近いあたり。
…やっぱり北の方に比べると、だいぶ天気がよくて、ものの色も違う感じでした。北のほうでも緑は多いんですけれども、カリフォルニアはやっぱり、気のせいか、人が着ているものの色なんかも、違った気がします。
これは、ポートランドです。ポートランドの、アートセンターみたいなのがあったビル。
アメリカではすごく、国旗をたくさん見ました。星条旗。日本で日の丸を見るのとは、全然違う頻度で。2週間ちょっと、居たんですけれども、1日に1回は絶対見てる。…基本的には電車でずっと回ったんですが、たとえばなんにもないところに、すごく大きな農家があって、周りにはなんにもなくて、家が2軒だけあって、その家の脇に、こう、国旗が、はためいていたりして。なんか、どっかで見たことあるような風景が、本当にあるな、って…。
これは、海岸沿いに、…ここにカナダとの国境があって、ここがシアトルだとしたら、ここをこう、ず一っとロサンゼルスまで下りてきて、で、ロサンゼルスから東にまっすぐ行ったんですが、ニューメキシコまで行ったんですが、そのニューメキシコに行く途中の、電車の中。…っていうかもう、ニューメキシコに入っているのかな。荒地の中。砂漠、「ハイデザート」っていうのか、砂ではなくて、土、と岩。ほかになんにもなかった。
で、ロサンゼルスで乗り換えて、ニューメキシコとかに向かう電車に乗ったんですけど、その電車に乗り換えると、突然、すごい、スペイン語をしゃべる人が多くて。この赤い服を着た女の子も、スペイン語でず一っとしゃべっていて、なんか、低い、いい声で。
…ず一っと英語を聞いていると、中途半端に意味がわかるんですけど、完壁にはわからない。…まあ、英語っていう言葉の感じもあって。でもスペイン語だと、わからないし、ちょっとこう、ほっとしました。あの、スペイン語を聞くっていうのは。
これは、ネバダ州の、ラスベガスからちょっと郊外に行ったバスの中から撮った映像です。星条旗のリュックを背負っていた。
これもそうですね、ラスベガスの郊外のバス停です。…基本的に全部、荒地なんですけど、ラスベガスを中心にして、郊外に新興住宅地が広がっていて、そこに向かうバスの中。ラスベガスで働いたりなんかしてる人が使うバス。…不思議でした。砂漠の中の新興住宅地っていうのを、たくさん見ました。
…その辺はだいたい、低い山、っていうか岩山に取り囲まれていて、というかまあ、それを削って拓いた土地に住宅を建てているんですね。だからこう、途中ですとーんと終わっているような、妙な、低い、切り立った山が結構多くて。これから造成するっていう感じの土地が、多かったです。
これも同じ辺り、ラスベガスの郊外。郊外に向かう幹線道路の脇なんですけれども。…すごく遠くもなく、すごく近くもないところに、低い岩山がずーっとあって、基本的に荒地なんだけれども、こういう灌木みたいなのが生えていたりもして、その中に道路が通って、車が走っていて、…おもしろい、不思議な景観だった。
…今回の展示を考えるにあたって、この今流れている、このパノラマの映像を、ここのモニターに映そうっていうのが、最初の発想だったんですね。この部屋の窓が、パノラマのようだと思って、重ねてみようと思った。
ネバダ州は砂漠気候なので、朝と夜の寒暖差が激しくて、乾燥していて。この日も4月なんだけど、昼間はだいぶ暑くて、もちろんTシャツー枚で、陽射しも強くて…。
あっちがラスベガス。ラスベガスの郊外は、その辺もカジノが許されていて、小さいカジノホテルが散在していて、日本のパチンコ屋みたいな感じ。この今、看板が映る、ここもそうなんですけど、この後、撮影した後に、ここでお手洗いを借りたんですが、本当に、暇なお年寄りが、暗いどんよりとした空気の中で、スロットに延々とコインを入れ続けている.…外はこんなにいい天気だったんですけど、中に入るとまったく違う空気が流れていて。中に入ったのはここだけなんですけど、こういうカジノホテルっていうのが、ラスベガスを取り巻くところに、たくさんあって。
これは、カリフォルニア州の、海岸の近くの、ロサンゼルスとサンフランシスコの間。サン・ルイ・オビスポっていう、ちっちゃい町。すごいちっちゃい町。で、その辺はそういう町が多かったんですけど、非常にこう、整って、きれいな、「きれい」っていうのは、清潔、につくられた住宅地。すごい静か。…あの、今揺れているのが星条旗なんですけど、こういう風に国旗を掲げている家が多い。
これは、そのサン・ルイ・オビスポっていうカリフォルニアの町から南下するバスの中。…私は勝手に、カリフォルニアっていうと、パームツリーがあって、緑が多くて、っていうのを想像してたんですけど、実際は、外に見えるみたいに、内陸のほうになるとすぐに砂漠になるので、荒れた土地っていうのが多かったです。
これは、カナダのバンクーバーに最初滞在したんですが、知り合いの家に。で、そこでテレビをつけたら、「ローマ法王が死んだ」って、ニュースでやってて。その映像です。…これはローマ法王の若いころですね。これも多分そうですよね…。
これは、カリフォルニアのサンタ・バーバラっていう町の駅。…子どもが、リュックサックを背負って、こう、ぐらぐら揺れてたんですね。Tシャツの胸に怪獣の絵が描いてあって、揺れてる。…それが、おもしろい感じで…。
これは、前に映ってた、ポートランドのビルで、アメリカの国旗が揺れてる映像があったんですけど、それの隣。というか道を挟んで向かいのビルの中で、ギャラリーかなにかつくってる、内装中の部屋です。…光が当たっていたので、「ちょっと撮らせてください」と言って…。