things not to rest (2011)
自分の言葉ではなく、他人の言葉を使って作品をつくりたいと考えていたとき、
ふと、友人からのメモの文字をなぞって書き写してみた。
「じゃあね。ばいばい。」という言葉だったと思う。
書き写してできた文字には、今書いたという感触が確かにあって、
でも、私の文字だとは言えない。
かといって彼女の文字だとも言えない。
アンビヴァレントな生々しさが残っている。
その文字を見つめていると
「ここには何か、メディアの大切なものがある」と感じて、
しばらく目を離すことができなかった。
他人の筆跡を書き写し、並べていくことを通して、
起源をもたない遺跡のような光景を思い浮かべている。
そこに見えるものは、ただそこにあるだけで、のこらないのである。
───
本展に向けては、ある大学生の女性と、その祖母2人との往復書簡などの筆跡をトレースした。
正像および鏡像の文字のトレース全62枚を制作し、うち51枚を展示。
5分ごとにゆっくり暗転して無灯となり,しばらく後に再び明るくなる照明構造とした。
(@表参道画廊/東京 照明:中山奈美)