corpus （2006）
3つの映像によるインスタレーション。
ビデオカメラ3台と三脚3台を担いで、東京の郊外の空き地や林や、川べりへ行く。
カメラ2台を並べて、同じ風景を撮影する。
私はカメラの後ろに立って、風景の中に何が見えているのか話す。
その自分の姿を、もう1台のカメラで撮る。
喫茶店を兼ねたギャラリーの壁に、
3台それぞれが記録した3つの映像を、映像内の時間をシンクロさせて、流しっぱなしにする。
各テーブルにはヘッドフォンを1つずつ置き、映像の中の音や声が聴こえるようにした。
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単調な風景を伝える２つの映像と、
少し離れたところで、その風景について語る人物の映像。
そのお互いは遠く、観客が映像を見ている「今ここ」からも遠い。
そのような「遠さ」の映像・音声を
「今ここ」のバックグラウンドとして配置した作品。
（＠contemporary art + café 西瓜糖／東京）
〈3つの映像画面のキャプチャと、映像のなかで語っている内容〉
1．
えっと、ここは、東京都の東のほう、江東区とちょうど千葉県との境に近いところで。
結構広い空き地になっていて、その向こうに、高層マンションとか、倉庫のようなものが並んでいます。たぶん空き地の向こうは、川になっていて、その向こうに、その高層マンションとか倉庫とか、が並んでいます。結構大きなクレーンが、2つ、3つぐらい、並んでいて、何か作っている最中なのかもしれない。で、その左側に、まるい屋根の大きな倉庫のようなものが見えて、今その前を何か、電車かなあ、ゆっくり左から右に動いて。
そのまるい倉庫の前を、車が、たまに通り過ぎていって、屋根が、車の屋根が光って、右から左に動いていくのが見えます。その前を、白い鳥が飛んで…。
ずっと左の、海に近いほうには、観覧車が見えます。あれはどこなのか、ちょっとわからない。空き地の中には、すすきみたいな、ちょうど腰、人間の腰か胸ぐらいの高さの、すすきのような草が立ち枯れている感じです。あと、緑色の植物が少し生えて。
水たまりが結構残っています。ちょうどおととい、先おとといにたくさん雨が降って、その水たまりがまだ残っています。
水たまりに、少し、その空き地の向こうの高層ビルが映っているのが見えます。
左手はもう海になります。空き地をぐるっとフェンスが囲んでいて、その海側のフェンスの外側は、テトラポット、テトラポットなのか、石でできた、四つの突起が組み合わさった大きな石の塊が、石というかコンクリート、…テトラポットが、たくさん、ちょっと埋める感じで、海沿いを埋めている感じで、たくさんあります。
たまに飛行機も、今も、飛行機が、ゆっくり、たぶんあれは降りていく感じなのかな…、ゆっくり、少しずつ、低くなって、左手のほうに飛んでいきます。
2．
ここは、調布と三鷹のちょうど境ぐらいで、調布の飛行場の、いちばん北の端側になります。
フェンスの向こうが飛行場の滑走路になっていて、今は使っているのかどうかわからなかったんですが、来てみたら、ヘリコプターとかセスナ機みたいな、前にプロペラがついているタイプの飛行機が、発着を繰り返しています。
左手のほうに何台か、飛行機がとまっています。結構雑草が、滑走路のアスファルトの間にも生えていて…。飛行機が、あの、離陸したり着陸してないと、本当に静かで、ただの空き地というか、本当に、なんにもない場所です。
今、左のほうから飛行機が、また、飛び立つのかな…。
ひばりが、ずっと鳴いています。
滑走路の右手側は、たぶん野球場になっていて、さっきも、白いユニフォームを着た男の人たちが、走っていきました。
なんか今、ひばりが滑走路に降りていった。
今日は日曜日で、滑走路の周りがちょっと、芝生が植わって公園のようになっていて、人がたくさん、散歩したりキャッチボールをしたり、お弁当を食べたり、しています。
3．
ここは、三鷹市の、ちょっと南のほうの、丘の上です。木の間から、ずっと住宅地が広がっているのが見える。だいたい黒い屋根、中にちょっと赤い屋根とか、青い屋根も、クリーム色の壁に青い屋根の建物が見えます。あとはだいたい黒っぽい屋根が並んで、ところどころに少し、木が、森か、林ぐらいの感じで、木がかたまって茂っているのが見えます。その向こうになんか、塔みたいなものが、いちばん頭のほうが、こう、円盤みたいにふくらんだ塔のようなものが見えて、その向こうに山が、低い山が見えます。
東京の、私が住んでいるところからは、そのあたりからは山というのはまったく見えないので、たまにちょっと出かけて、東京近郊で山が見えるような場所に来ると、ちょっとびっくりします。 でもあれも山、山っていうのか、丘ぐらいの感じなのかもしれない。
ずーっと、車の走っている音が、聞こえてる、聞こえてるっていうか響いている感じで、そこにたまに、…のような物音が聞こえます。
今日は結構風が吹いているので、木の揺れている音が、木が揺れて、葉っぱがこすれている、音がしています。
4．
ここは、足立区の、東京の足立区の、まあ川沿いですね。土手のところが、芝生が植えられて、ちょっとこう、緑地帯になっていて、ちょっとした公園のような、ブランコとか鉄棒とかもあって、それは今映ってないんですけど、前方の、向こうのほうには、なんかこう、ゲートボールとかができるように少し整地したところもあって、…まあ今はだれも使ってない。 川の向こう側が、川の向こう側に、高速道路、たぶん高速道路が、2本、2つの方向に走っていて、結構混んでいて、途切れはしないけれどもずっと車がつながって、結構ゆっくり動いていきます。ちょうどこの後ろの、この橋を渡って、また川沿いにずっと、高速道路と同じ、…
そのずっと、すぐ向こうのちょうど正面に高速道路、その手前に線路が走っていて、ちょうど今も、右のほうから電車が、たまに電車が走っていきます。
正面の右手、その左から右に向かう高速道路がずっと、右に行って土手のところで切れるあたりに、白い建物がひとつあって、その建物の向こうに、煙突のような、塔のようなものが建っていて、ずっと、白い光が、点滅…しています。
鳥がよく飛んで、あと、この土手の右側のところが、ずっと遊歩道みたいになっていて、人が、自転車に乗ったり散歩したり、ジョギングしたりしています。今日は平日なんですけれども、結構行き来しています。
5．
ここは私の自宅です。いつも、だいたいこの部屋にいるんですけれども、まああの、陽差しが入る部屋で、庭、庭ともいえないぐらいの、敷地の中のあまったスペースみたいなところに、木が、木とか、なんか植物がいくつか植えられていて、全然手入れとかしないので、もう伸び放題です。今日は朝、午前中に、すごい雨が、どのぐらい、30分ぐらいの間だったと思うんですけど、すごい勢いで降って、ですぐに止んで。それからぱあーっと晴れてきて、なんか、濡れてた植物の、ちょっとまだ土は濡れてますけど、塀とか、木の葉っぱとか、物干し竿とか、隣の家の、アパートの階段とか、壁とか、全部もう乾いてしまった感じです。
それからずっと風が吹いていて、ずーっと、木の枝とか、ずっと揺れてます。
赤い花が、これはぼけなのかな、よくわからないんですけど、赤い花が咲いていて、あとからすうりの実が、もう干からびて、つりさがっています。
目の前の木は、ひとつは山椒と、もうひとつはなんだかわからないんですけど、山椒はいつも、もうすぐ、5月6月ぐらいになると、実がつきます。
向かいはアパート、アパートというか、4世帯だけ入る、1階2世帯2階2世帯の、ちょっとこう長屋っぽいアパートになっていて、目の前に2階に行く階段があって、たまにこう、木の枝を切るためなんかに、階段をちょっと上らせてもらったりすると、もうこの部屋は丸見えで、ふだん、あったかい季節なんかは、窓全開にして、ごはん食べたり、何かしたりしてるので、全部丸見えですね。逆にこっちからも、階段を上り下りする人が、してると、もちろん見えます。今ちょうどそこに野良猫が来て、昨日の、…あ、もう1匹来た…。
結構猫が多くて、あと屋根裏にすんでるみたいで、最近子どもが生まれて、たまに天井から、子猫の声が聞こえます。
線路が結構近いので、よく電車の音が聞こえるんですけれども、まあでも割と静か、ですね。